アッサラーム・アレイコム
 本日は寒いところ、お買い上げ下さり、または立ち寄ってくださって
本当にありがとうございます。当方、超ドマイナーなイスラーム・サークルでございます。
 以前は歴史のすみっこで細々とやっておりました。
またまた旅行本を作ってしまったので、前回より引続き、旅行で参加させて
いただいております。どうか、しばし、おつきあい下さいませ。

★というわけでシリア本第三弾。アレッポ滞在編です。
 今回も見事に増えてしまいました。最初は(準備号の書式40×30で)25枚がまたまた
39枚に。(四百字で75枚・116 枚)。
 図版も3つほど入りませんでした。(完成版にはきっと!)
 伊東忠太氏の記述も次回にずれました。(予告に偽りあり)
 アレッポ城全体と城門の写真は準備号に載せたので今回は入れませんでした。
 なるべく同じ写真や図版は使わないようにしたいので。

★毎度のことながら、イラストの亜神さん、地図の中原さん、本当にありがとうございます。
 亜神氏はまたまた7点も描いてくれました。特に力作が表紙のアレッポ城。
苦労して仕上げてくれた復元想像図(資料探しも苦労させられましたが)。
 さて、現代とどこが違うかわかります?

★でも一番大変だったのは、土壇場でプリンターが死にかけたこと。
 実はうちのワープロとプリンターは骨董品なのです。友人の会社でお払い箱に
なったものをタダ同然で譲ってもらったもの。
なんと業務用オアシスと巨大なドットプリンターなのです。
 これがもう、優秀なのなんの。まるで江戸の職人芸のように素晴らしいのです。
 その友人に言わせると、もうとっくに寿命が尽きて、幽霊になっているのを、
散々こき使ったんだから、当然だと言われました。
もういい加減、供養してあげなさい、って。
 でもホント、困るんです。どうしよう。パソコン、嫌いなんです。

★ここでちょっとシリアのガイドブックについて。
 ベストは現地で買った『Monuments of SYRIA』 これが一番詳しい。
でも地図がアバウト。図面が正確なのは、
SYRIA a historical and architectural guide  Warwick Ball
 日本で注文可能なのは、
Syria & Lebanon Handbook Footprint
 これもわりと詳しい。でもコンパクトで網羅しているのはやはり
SYRIA JORDAN [Guide Neos] Michelin
 やっと英語版が出た。フランス語が読めるならダンゼン、
SYRIE [Guides Bleus] Hachette Livre
 私は読めないくせに地図や図面だけ利用させてもらっている。とにかくやたら詳しい。
 そしてこれも読めないくせに古いイラストが沢山あるドイツ語の
Syrien J.Odenthal DuMont Buchverlag K ln

★日本語でシリアを紹介した本では、
 シリア P.K.ヒッティ 中公文庫 1991
 シリア〔文庫クセジュ670 〕 P.ロンド 白水社 1985
 古代シリアの歴史と文化 H.クレンゲル 六興出版 1991
 西アジア史〔世界各国史 11 〕前嶋信次 編 山川出版社 S52
 ヒッティは『アラブの歴史』講談社学術文庫 も翻訳が出てる。
 古代のメソポタミア〔図説世界文化地理大百科〕M.ローフ 朝倉書店
 も地図がいっぱい載っていて楽しい。
 ロレンスに関しては、
 アラビアのロレンスを求めて 牟田口義郎 中公新書1499 1999
 がよくまとまっていて面白い。

★ところで今回、予定通りに過ごしていたら、正直シリアの新刊は無理でした。
本当なら、夏に予告した通り、10月末にヨルダンに行っているはずでした。
だからヨルダン速報くらいは出したいなあ、と考えていたのです。
すべての砂漠の宮殿、十字軍の城、そしてヨルダン渓谷……。
飛行機は七月の初めには取れていました。ホテルも、ガイドも。
 それがすべて、パアになりました。勿論、あの九月十一日のテロのせいです。
いいえ。その後のアメリカの報復のせいです。家族からは泣いて猛反対され、
同行者のK氏の会社からも海外渡航(出張も個人旅行も)全面禁止のお達しが
出てしまいました。止めは外務省の中東全域の『危険度2。避難勧告』警報発令です。
ギリギリまでねばってくれた旅行会社の努力もむなしく、あっけなく
中止となってしまいました。
 2週間前だったのに、キャンセル料は取られませんでした。テロ事件の直後から、
何度も旅行社と話しました。1か月前の段階で、キャンセルしようとしたら、
もう少し様子を見ましょうと言われ、ホテルだけ取消しました。
「キャンセル料は大丈夫なんですか」
「大丈夫です」
「でも、旅行社が被るんだったら、止めてください」
「いや。こういう事態ですから、それはないです」
 それでも外務省の勧告には太刀打ちできませんでした。
 それにしても奇妙です。悪い冗談です。アフガニスタンと周辺諸国はまだわかります。
でもイラクやさらに中東全域ってどういうことでしょう。
 さらにもっと不思議なのはアメリカには何の警告も出ていないことです。
 重ねて、戦争を始めてからも、「アメリカは安全です。是非来て下さい」
とは、どういう意味でしょう。戦争を始めた張本人の言うセリフでしょうか。
 彼らには、自分たちが戦争を始めたという自覚がないのでしょうか。
『週刊文春』によるとさすがにこれには、アラブ諸国から抗議があったそうです。
記者のコメントによると、日米間の便は正規料金のドル箱なので、とても勧告を
出せないのだろうとのこと。実にふざけた話です。
 そうしてある日、以前使った別の旅行社から突然封書が届きました。
何事かと思ったら、なんと、避難勧告の解除のお知らせでした。
 その日はカーブル陥落翌日のことでした。いかにもお役所のその場しのぎの
応対らしさが滲み出ていて、笑ってしまいました。

★今回の九・一一事件(と友人Aが命名)以降、眠れぬ夜が続きました。
いったい西アジアはどうなってしまうのか。どうすればいいのか。
真面目に悩んでしまいました。
 一番おそろしかったのは、連日、ビルの倒壊シーンをたれ流している
ニュース映像でした。
 ひどく意図的なものを感じました。反イスラーム感情を煽るためか。
 報復を正当化するためか。
 パレスチナでテロやイスラエル軍の攻撃が起こっても、テレビには流れない。
そう。同じことが他で起こっても、たいした報道はされません。
 でもアメリカで起これば、大騒ぎになるのですね。
 メディアでさえ、公正ではない。誰もが、自分の都合のいいように編集している。
意思を持った報道に騙されないようにしないと。
 戦時中の報道ほど信用できないものはないことは衆知の事実です。

★それに日本の報道もすごくヘンです。一方的すぎます。
まず『オサマ・ビン・ラーディン=イスラーム原理主義』という短絡的な思考。
 彼らはただイスラーム原理主義を利用しているにすぎないのでは。
 ビン・ラーディンが悪いから、ムスリムがすべて悪いといのは、オウム真理教や
赤軍がテロをしたら、日本人全員が悪いと言われるようなものではないでしょうか。
 過激派はどこにでもいますよね。
 ネオナチが悪いから、ドイツ人がすべて悪いのか。ETAが悪いからスペイン人や
バスク人も悪いのか。IRAが悪いからアイルランド人はすべて悪なのか。
 パレスチナゲリラが悪いから、パレスチナ人がすべて悪いのか−ということに
なりますよね。

★それから『タリバーンの恐怖政治』という無責任なネーミング。
 北部同盟が善でタリバーンが悪だという単純な図式。
 音楽や教育を禁止し女性を差別したから悪だというもの。
 カーブルが落ちたから、もう戦争は終盤という言い方。
 そして不気味なのは、自衛隊に対する、中国やアジアの沈黙。

★とはいえ、どんな偏った情報であっても、流さないよりは、流した方が
いいと思うのです。
 はからずも、今回のテロは、世界の目をアフガンに向けさせるという目的は
達したわけです。そしてイスラーム世界の問題−パレスチナにも注目させることに
成功したのです。
 これらは、非常に複雑で困難な問題であることは間違いありません。
絶望的ともいえるでしょう。それでも、監視し続けることが、我々にできる唯一の
ことかもしれないと思うのです。誰かが勝手なことをしないように。

★それでも疑問はまだいっぱいあります。
 どうしてアフガンはこれほど無視され続けたのか。
 アフガンの問題の根本は本当にパレスチナなのか。
 本当にビン・ラーディンがやったのか。
 どうしてああも迅速に犯人を特定できたのか。
 確たる証拠とは何だったのか。
 そして何故、ああも都合よくアメリカの経済が落ち込んだ時にテロが起こったのか。
 何故、マドラサの指導者がああも反米感情を煽るのか。
 何故、モニカ・ルインスキー事件直後、アメリカはタリバーンを見捨てたのか。
 何故、みんなアラファト議長の声に耳を貸さなかったのか。

★アメリカが追い詰めて、手を出させた(真珠湾の時のように)という説もあれば、
軍需産業の陰謀説まであります。
 トマホーク・ミサイルは一発一億円だそうです。そんな高価なものを実に景気よく
消費しました。さらにこれでアメリカの経済は回復するだろうという予測を述べている
専門家がいました。なんか都合よすぎない? と思う人がいても不思議ではないかも。
 まあおそらく真実は百年くらい経たないとわからないのでは。

★日本の立場については、確かにアメリカの傘下にいるのが現実です(属国という説も)。
でも日本ができることは、自衛隊派遣よりも、どんなに下手でもいいから、
仲介外交しかないと私も思います。

★でも日本にとっては狂牛病も深刻なのではないでしょうか。
それがテロのせいで軽く見られているような気がします。
 それに景気も何もかもテロのせいにしているな、って感じませんか。

★まあ何かを少しでも変えたいと思ったら、やはりきっちり選挙には行かないと
だめなんですね。人の言うことに惑わされないで、まず疑って、自分で考えないと。
 我々の未来を。何が真実なのか。目を背けずに。
 無関心なのが一番こわいと思います。権力者の思う壺ですからね。
(なんか随分、熱くなってしまいました)

★亜神氏のお勧めの本は『タリバーン』ラシッド 講談社です。
 他にも中村哲氏、山口昌之氏、小杉泰氏の著作も勧められました。
 最後に水木弘さん、カットありがとうございました。
 ではまた、いつかお会いできますように。
 インシャッラー。
                                          二〇〇一年十二月

    チャイハネ・ひすいろう 7/2001年12月
     










































 



 



























































































































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