(『アル・アンダルス遊記──コルドバ 1・2』について)

これ、もしかして、終わってないのでは?
──ハハハ。実はそうなんです。バレました?

あたりまえでしょう。だって、『グラナーダへ』ってなって て、そのあとがないじゃない。
──すみません。今回、全部、入りきらなかったんですよ。次回 になります。

ちゃんと、出してね。
──努力します。コルドバも、続きがありますから。

それにしても、たった2日しかいなかったのに、よく 100ページも書いたねえ。
──いやあ、自分でも呆れています。ガイドブックには、普通だいたいたった2ページしか
   載っていないんですよ。でも、実はガイドブックにも載っていない遺跡が
   沢山あるんです。そしてその歴史的背景はもっと深く 面白い。
   それを調べて行くうちに、気がついたら 100ページにもなっていたというわけです。
   実際、これほど見所の多いコルドバを、
   普通はセビーリャから日帰りツアーでしか行かないというのも、
   もったいない話ですよ。とくにイスラーム時代の知られざる遺構は、
   本当に数多くありますから。
   この2年後、2度目に訪れた時は、3日滞在しました。
   しかも半日ずつガイドを頼んで、やっと、チェックした場所を
   全部回れたというところです。
   一人で探しながら回ったら、おそらく、倍の時間はかかったでしょうね。

確か、去年も、スペインに行かなかった?
──はい。トレドとグラナーダと、アルヘシーラスへ行ってきました。

誰かの銅像と写真撮ってきてたよね。
──パコ・デ・ルシアです。アルヘシーラスは彼の故郷なんです。今年、また、
   日本に来たんですよ。

行ったの?
──渋谷の公演の分だけですが。4日。

渋谷の公演の分だけって‥‥、あのねえ、それだけ行けば充分でしょうが。
よくかようねえ。おんなじ公演に。
──とんでもない。毎日、アレンジや演奏が変わるんですよ。
   その日の調子や客の乗りによって。
   もうどんどん変わっちゃうんですから!

はいはい、ご苦労さま。それで今回はどうだったの?
──いやあ、随分変わっていて、びっくりしました。
   以前は演奏のムードが、暗く、深く、かなしいくらいに綺麗だったんです。
   それが、今回は、暗い洞窟の果ての明るい光景という感じで、
   悟った様な明るさが出てきました。

へええ。
──ここ2、3年、いろいろあったから。
   親友のカマロン・デ・ラ・イスラ(最高のカンタオール[フラメンコの歌い手]
   だった)は亡くなるし、
   お父さんも、お母さんも亡くなったんですよ。
   そういう悲しみを経て、それでも、ああ、やっとこういう境地に
   至ったんだなあって、感じました。
   彼の音楽は、本当にいろんなことを語りかけてくれます。
   それから、お兄さんのペペ(カンタオール)の代わりに、
   今回、カマロンの秘蔵っ子といわれるドゥケンデが
   新メンバーで来たのですが、もう、すごかった。
   でもまだ、若くて、かわいいの。

‥‥がんばってね。

そういえば、イランのガイドブックを作っているんだって。
──ええ。某旅行社の依頼で、日本初のガイドブックをつくろうと。

あれ? そういえば、イランのガイドブックって、見たことないよねえ。
──そうなんです。どこからも出てないんです。唯一、JTBの中近東の中に、
   ほんの少し、入っているだけ。
   『地球の歩き方』でも、ようやく出るという噂もあります。
   最近、旅行人というところから出た『アジア横断』の中にも、少し載っています。
   だから、ちゃんとしたものを出したいねって、話しています。

イランの旅行記は書かないの?
──書きます。イランだけじゃなくて、モロッコやダマスカス(シリア)にも行ったので、
   それも、書きたいんですよね。

ツアーじゃなくて、よくそんな所、行くねえ。
──最初のイランはツアーだったんだけど、散々な目にあって懲りました。

死人が出たり、遭難しかけたんだってね。
──そうなんですよ。もう、大変だったの。その話も今度書きたいと思っていますので。

そればっか。いつになることやら‥‥。
──すみません。気長にお待ちください。

今回も、素敵な方が、ゲストに来てくださいました。

ふみ吉さま
イタリア好きというのに、無理やり、引っ張りこんですみませんでした。
でもイタリア・ルネッサンスのルーツは、イスラーム文明なんです‥‥ってことで
ご勘弁ください。流血のボアブディルと、うるわしのナスルのシーンには、
感激しました。ジルヤーブも、妙に活き活きして、別人のようです。
彼の新たな一面を発見してしまいました。

水木 弘さま
麗しい踊り子を、サマルカンドから連れて帰ってきて下さって、
ありがとうございました。
いまにも、鈴の音が聞こえてきそうです。衣装はダマスカスで調達したそうですね。
さぞ、売れっ子なのでしょう。

影山和香江さま
いつもながら、ムードのあるイラストですね。
グアダルキビール川のほとりの塔から、故郷のシリアでも、
想っているのでしょうか。

亜神さま
筆が冴えていますねえ。メスキータのアーチの森の中にも、
ミフラーブの前の空間にも、不思議な空気がこ もっていますよ。
失われた静寂と祈りの空間が、見事によみがえっています。
メディーナ・アッサーラの広間の、はかない白昼夢のような雰囲気もいいです。
水盤にたたえられていたという水銀のゆらめきが、なんともいえません。

中村公則先生
サーデク・ヘダーヤドという作家の小説を翻訳なさっている
ペルシア文学の先生が、2つ返事で、なんとも素晴らしい題字を
描いてくださいました。
先生と出会った時、まだイランとイラクの区別もついていなかったのは私です。
ここまでこれたのも、ひとえに、先生のおかげです。
不肖の弟子で申し訳ありません。

〔お勧め本〕 『アラブから見た湾岸戦争』
       モハメド・ヘイカル著 時事通信社 1994
  Illusion of Triump−An Arab View of the Gulf War
 日頃、我々はどうしても、欧米よりの視点になってしまう。
学校の授業や、新聞やTVのニュース報道からしてそうだから、
しかたないとはいえ。
これを読むと、第2次大戦後から湾岸戦争までの、アラブの事情がよくわかる。
 まず、イラクがクウェートに侵攻するに至った経緯がちゃんとあった。
そもそもクウェートが、イラクの領土に勝手に手を出したのが、原因だという。
そして怒ったフセインが『攻めるぞ』と、2年前から言っていたのに、
誰も信じなかった。
 さらに、イラク侵攻にアメリカをけしかけたのは、やはりサッチャーだった。
 著者は親米派のエジプト人ジャーナリスト。
ナセル・サダト政権下で政策にも参加したが、
サダトと対立して投獄された経験をもつ。読みにくいが面白い。

〔題字解説〕

翡翠楼  Qasre Zhad
ジルヤーブ  Ziryab
アベンセラッヘ家の虐殺 Qatle amme Ale b.Saraj
グラナダ落城  Soqute Garnata
アル・アンダルス遊記──コルドバ Rihlatul Andalus Qurtuba
  アブドル・ラフマーンの栄華 Izzatul AbdurRahman
  アブドル・ラフマーンの夢 Hulmul AbdurRahman

    チャイハネ・ひすいろう 1/ 1998年8月
     

















































































































































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